1. 生きる
黒沢監督のヒューマニズムが頂点に達したとされる映画作品です。
癌を宣告された市役所職員が人間として目を覚まし、命を削って最後の仕事を全うするという王道ストーリー。
21世紀の視点だからかもしれないですが、やや凡庸で物足りなかったです。
2. あらすじ
市役所で市民課長をしている渡辺勘治が主人公。住民の意見をキャッチするために作られた市民課だったが、実態はお役所仕事な部署間のたらい回しを行うだけ。渡辺はすっかり職員としての情熱を失っていた。
ある日、渡辺は癌を宣告される。息子夫婦からも冷たくされ、自分は何のために生きてきたのかと迷う渡辺。
そんな渡辺は、偶然居酒屋で出会った小説家に連れられ、街を遊んでまわる。さらに、市役所をやめ、おもちゃ工場に転職した女性、小田切とよとの親交も深めていく。
人間として生きる実感を欲しはじめた渡辺。住民たちの要望を前に、市役所組織相手に立ち上がる。
3. 感想
冒頭の「この男は死んでいる」は余計ですね。そこは映画表現で表さないとしらけてしまいます。
また、ストーリーも凡庸で、人間は余命が数か月になったら必死になるというありきたりさ。
しかし、主人公を演じる志村喬の演技は絶品。情けない、でも、どこか温かみのある表情には柔らかな熱情と哀愁が両立しています。
構成も特に凝ったところはなく、葬式で故人渡辺の仕事を振り返るのも、市役所の職員たちの振る舞いがベタすぎます。
黒澤明という名を冠しながら普通だったという印象です。
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